所得税 2019.2.15

確定申告とは

確定申告とは
毎年2月、3月になると、確定申告に関する記事や広告を目にする機会が増えると思います。そもそも確定申告とは何でしょうか。所得税の仕組みも含めてご説明します。

所得税の分類

所得税は①個人の儲けに対して課税されるものと②配当のように支払いを受けるときに徴収されるものがあります。いずれも所得税法に規定されているのですが、課税(徴収)されるタイミングが異なるので、前者を申告所得税、後者を源泉所得税と一般的には表現します。ここでは、申告所得税についてご説明します。(なお、厳密にいうと、申告所得税にも総合課税制度、源泉分離制度、申告分離制度と分かれるのですが、以下では総合課税制度について説明します。)


納付税額の計算の流れ

申告所得税の納付税額の計算は、以下のように行います。

納付税額
=(所得金額-所得控除額)×所得税率-税額控除-源泉所得税-予定納付額

所得金額は収入金額ではありませんので、注意が必要です。収入金額から必要経費などの費用を控除することができるのですが、所得の種類によって控除できる費用や金額が決まってきます。詳細については割愛しますが、不動産所得や事業所得などは収入を得るためにかかった必要経費を、給与所得は収入金額に応じた給与所得控除額を控除することになります。
税額控除とは、住宅ローン控除などが該当します。
予定納付額とは、法人税でいう中間納付額のことで、原則として前年の納税額の約1/3ずつを年2回納付することとなっています。


所得の種類

所得税では、収入の種類によって、所得を10種類に分類しています。
所得の種類・・・利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得、一時所得、雑所得
主な所得について、簡単にまとめました。

所得区分 内容 医療機関での具体例
不動産所得 土地や建物などの不動産などの貸付けによる所得 駐車場や賃貸マンションの貸付け
事業所得 製造業、卸売業、小売業などの事業から生じた所得 クリニック、病院の運営
給与所得 勤務先から受ける給料、賞与などの所得 非常勤医師給与
退職所得 退職により勤務先から受ける退職手当などの所得 独立する前に勤務していた勤務先からの退職金
譲渡所得 土地、建物、ゴルフ会員権などの資産を譲渡することによって生ずる所得など 土地や建物の譲渡、事業用の車両の譲渡
一時所得 利子所得~譲渡所得のいずれにも該当せず、営利目的の継続性や対価性のない所得(たまたま貰えたような所得) 生命保険の一時金や損害保険の満期返戻金
雑所得 利子所得~一時所得のいずれにも該当しない所得 原稿料、講演料

不動産所得、事業所得、給与所得はほぼ毎年発生すると思います。しかし、退職所得、譲渡所得、一時所得、雑所得は毎年発生するとは限りませんので、申告漏れが発生しやすい所得です。通帳などを確認し、いつも発生しない収入がないか、確認をしたほうがよいでしょう。

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/shoto319.htm
(国税庁HP 所得区分)

所得控除の種類

所得控除には、以下のようなものがあります。
所得控除の種類・・・雑損控除、医療費控除、社会保険料控除、小規模企業共済等掛金控除、生命保険料控除、 地震保険料控除、寄附金控除、障害者控除、寡婦(寡夫)控除(この控除は女性の場合と男性の場合とで要件に差があります。) 、勤労学生控除、配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除、基礎控除
平成30年分以後は、控除を受ける納税者本人の合計所得金額が1,000万円を超える場合は、配偶者控除及び配偶者特別控除は受けられません。基礎控除については、平成31年分までは38万円、平成32年分以降は48万円となります。税制改正により、控除の要件や控除額が変わりますので、毎年確認が必要です。

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/shoto320.htm
(国税庁HP 所得控除)

所得税額の計算

所得税の税率は、以下の通りです。所得金額から所得控除額を控除した金額(課税所得金額)に応じて税率や控除額が異なります。
所得税額=課税される所得金額×税率-控除額

所得税の速算表
課税所得金額 税率 控除額
195万円以下 5% 0円
195万円を超え 330万円以下 10% 97,500円
330万円を超え 695万円以下 20% 427,500円
695万円を超え 900万円以下 23% 636,000円
900万円を超え 1,800万円以下 33% 1,536,000円
1,800万円を超え4,000万円以下 40% 2,796,000円
4,000万円超 45% 4,796,000円

※ 平成25年から平成49年(2037年)までの各年分の確定申告においては、所得税と復興特別所得税(原則としてその年分の基準所得税額の2.1%)を併せて申告・納付することとなります。

税額控除

税額控除とは、課税所得金額に税率を乗じて算出した所得税額から、一定の金額を控除するものです。配当控除や外国税額控除などがありますが、よく出てくるものは住宅ローン控除(正式には(特定増改築等)住宅借入金等特別控除)でしょう。

源泉所得税

源泉所得税は、給与の支給を受ける場合に徴収されますが、それ以外でも、以下のような場合に徴収されます。なお、現金ではなく、もので受け取ったとしても、受け取ったものの時価に対して源泉所得税が課されることになりますので、現金でもらっていないから確定申告や源泉徴収が不要というわけではありません。

源泉所得税が徴収される主な場面
徴収される場面 内容
配当金を受け取ったとき 配当金を受け取るときには、配当金から源泉所得税を控除した金額が入金されます。しかし、配当金については、一定の場合確定申告をする必要がありません。
社会保険診療報酬支払基金から診療報酬を受け取ったとき 支払基金から診療報酬を受け取る際には、源泉所得税が控除されています。ただし、国保連合会からの診療報酬については、源泉徴収されませんので、ご注意ください。
非常勤医師給与を受け取ったとき 給与ですので、源泉所得税が控除されて入金されます。
雑誌に寄稿したり、書籍を執筆したりした際の原稿料を受け取ったとき 原稿料や印税も源泉所得税が控除されて入金されます。消費税及び地方消費税(まとめて消費税等といいます)が課されている場合には、消費税等も含めた金額に源泉所得税が課されます。しかし、消費税等が区分されている場合には、消費税等を除いた金額に源泉所得税が課されます。
講演料を受け取ったとき 講演料も源泉所得税が課されます。車代などの名目で受け取ったものについても、講演料として受け取ったものであれば、源泉所得税が徴収されます。

よくある疑問

Q1.確定申告は誰でもしなければならないのですか。

A1.確定申告しなければならない人は決められています。

次のような方は、確定申告をする必要があります。
(ア) 給与所得がある人
給与の収入金額が2,000万円を超える人、給与以外の所得(収入ではありません)が20万円を超える人など
(イ) 年金をもらっている人
年金にかかる雑所得の金額が所得控除額を超える人
ただし、年金の収入金額が400万円以下の人や年金にかかる雑所得以外の所得が20万円以下の人は確定申告をする必要はありません。
(ウ) 退職所得がある人
外国企業から受け取った退職金など、源泉徴収されないものがある人
(エ) (ア)~(ウ)以外の人
所得税額を計算し、算出された所得税額が配当控除額を超える人

Q2.確定申告をする必要がなくても確定申告をしてもいいのですか。

A2.確定申告が必要なくても、確定申告をすることはできます。

例えば、以下のような場合には、確定申告をしたほうがいいでしょう。
(ア) 税金が戻る場合
確定申告をする必要のない人が医療費控除や寄附金控除などを受ける場合、年末調整を受けていない場合など
(イ) 繰越控除の適用を受ける場合
今年発生した損失を翌年以降に利益が出たときに控除することができるものがあります。これを繰越控除といいます。例えば、上場株式等を売却して損失が出た場合に、翌年以降の株式の配当や上場株式等の売却益と相殺できる特例です。繰越控除を受けるためには、確定申告が必要です。

Q3.納税が発生した場合、いつまでに納めないといけないですか。

A3.申告期限と納付期限は同日になります。

Q4.窓口で納付するのは面倒なので、ほかの納税方法はありませんか。

A4.納税方法は、振替納税、e-Taxで納付、クレジットカードで納付、コンビニエンスストアで納付、金融機関又は税務署で納付のいずれかで行います。

(ア) 振替納税
振替納税とは、納税者ご自身名義の預貯金口座からの口座引落しにより、国税を納付する手続です。預貯金口座振替依頼書兼納付書送付依頼書を納付期限までに納税地を所轄する税務署又は振替依頼書に記載した金融機関へ提出することで、利用することができます。引き落としは納期限の約1か月後になりますので、指定した預貯金口座の残高をご確認ください。また、予定納付についても振替納税されますので、大変便利です。
(イ) e-Taxで納付
インターネットバンキングやATM等により国税を電子納付する手続です。事前にインターネットバンキングの口座開設やe-Taxの利用開始手続が必要です。
(ウ) クレジットカードで納付
トヨタファイナンス株式会社が運営する「国税クレジットカードお支払サイト」へアクセスして納付する手続です。
(エ) コンビニで納付
自宅のパソコン等で作成したQRコードを使用し、コンビニで納付する手続です。QRコードは、国税庁HPの「確定申告書等作成コーナー」及び「コンビニ納付用QRコード作成専用画面」で作成することができます。
納付できる納税額は30万円以下となっています。また、すべてのコンビニで納付できるわけではありませんので、ご注意ください。
(オ) 金融機関又は税務署で納付
金融機関又は所轄の税務署の窓口で、現金に納付書を添えて国税を納付する手続です。

各納付方法の特徴をまとめると、以下のようになります。

納付方法 毎年納付手続が必要か 毎年の手続が自宅で完結できるか
振替納税 毎年の手続きが不要
e-Taxで納付
クレジットカードで納付
コンビニで納付 不可
窓口で納付 不可

まとめ

  • 申告所得税(総合課税制度)では、所得の合計から所得控除額を控除した金額に税率を掛けて所得税を計算し、そこから税額控除額や源泉税額などを控除して納付税額を計算します。
  • 所得と収入金額は違います。
  • 確定申告をしなければいけない人は、条件に当てはまる一部の人だけです。
  • 還付を受ける場合などは、確定申告をする必要があります。
  • 税金の納付方法はいくつかの種類から選ぶことができます。

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/shoto319.htm
(国税庁HP 所得区分)

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/shoto320.htm
(国税庁HP 所得控除)

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/shoto321.htm
(国税庁HP 税額控除)

http://www.nta.go.jp/taxes/nozei/nofu/01.htm
(国税庁HP [手続名]国税の納付手続(納期限・振替日・納付方法))

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